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子どもたちに知ってほしい!サッカーの裏方職業についてのまとめ。⑧ユースコーチ編

将来、子どもたちの職業の選択肢になるかもしれないサッカー選手以外の裏方の職業についての第8弾です。
実業之日本社から出ている『サッカーの憂鬱』(能田達規著)をテキストに、サッカーの裏方の職業をシリーズでお届けします。
今回はユースコーチ(Jリーグチーム下部組織のU-16~18のコーチ)についてです。ユースコーチという職業について、少し深く掘り下げてみましょう。

photo:Tom Childers

CASE.8 あらすじ

コーチ1photo:USAG- Humphreys

場面は出雲ミストラル(N2クラブ)のセレクション会場。ユースのセレクションが今から行われます。応募者は1672人。そして、採用予定は10人。これから始まるセレクションの中で、1662人に「不合格」の通告をしなければならないユースコーチが主人公です。

『サッカーの憂鬱』は、日本全国にNリーグがあり、N1、N2とそれぞれプロチームがあるという設定になっています。Jリーグと同じ仕組みです。出雲ミストラルももちろん架空のチームですが、『サッカーの憂鬱』の特徴は、かなり細かい事実まで調べて描かれているところです。

「1分も見ればわかる」

コーチ2photo:USAG- Humphreys

セレクションを受けて、受かる選手と落ちる選手の違いは何でしょう。これは、ジュニアサッカーNEWSにもたくさん寄せられている質問です。

全てのセレクションに、明確な合否の線引きのラインというのはありません。50mを6秒台で走れれば良い、リフティングを何回以上できればよい、というラインはないのです。

それゆえに、不合格になる選手は理由がわかりません。自分が惜しかったのか、合格からは遠かったのかすらわからない選手もいると思います。

出雲ミストラルのセレクションは、次のような選出システムによって行われます。

1次選考:1672人→30人

各地区でセレクションを行い、応募してきた1672人を30人に絞る

2次選考:30人+10人→20人

1次選考で選ばれた30人に加え、出雲ミストラルの下部組織、ジュニアユースから選抜された10人が加わり、40人になります。40人がテストマッチを2日間行い、20人に絞られます。

最終選考:20人→10人

2週間の合宿を行い、最終合格者の10人を決定します。出雲ミストラルのユースチームは、3年間全寮制です。集団生活を行っていける強いメンタルはあるか、協調性はあるかなどメンタル面も総合して判断されます。

どこを見て選ばれるのか。ユースコーチは、1次選考は「1分も見ればわかる」と言います。

サッカーはいろいろな技術を必要とするスポーツです。足の速さ、足元のテクニック、状況判断する力、パスの精度などなど、枚挙にいとまがありません。

その中で、「光る選手」を見つけ出す。それがセレクションなのです。「光る」に明確な規定はありません。不器用でもこれから伸びると思わせる選手など、ユースコーチの心を動かした選手が選考の上の段階に進めるのでしょう。

1次選考は記念受験者も当然います。ですので、この段階で落とされる子の落胆はそれほどでもないと言います。問題は2次選考の段階から。選手も保護者も、そして指導者も真剣になってくるため、さまざまな問題が起こります。

条件はテクニック+フィジカル

コーチ3photo:USAG- Humphreys

現在のユース年代に求められるものは、第1条件としてテクニック(『サッカーの憂鬱』)だと言います。しかし、日本サッカーはテクニックだけでなく、この年代からフィジカル、身体的強さも求められる傾向にあるようです。

ユースチームのセレクションを受けるのは中学3年生の選手たちですが、この段階では個人差が著しく、第二次性徴が終った選手とまだ来ていない選手ではまさに大人と子どもほどの違いがあります。

テクニックはあっても、身長などのフィジカル面にこの段階で恵まれていない選手は不合格になってしまうこともあります。

ジュニア年代の選考基準は?

コーチ4photo:woodleywonderworks

トレセン、ジュニアユースの選考に関する部分は、細かい基準はないということを前述しました。実際、選考に当たっている方々がどのようなことを注目しているのかを、日本サッカー協会の発行している月刊誌、『JFAニュース』から拾ってみました。

「全てを兼ね備えているというよりは、そのどこかに大きな可能性を秘めていることを重視している」(柏レイソルU-9)

「(技術の高い選手だけではなく)判断の部分や周りに目を配ることができる子など、少しでも何か特徴をチェックしておいて、最終的にバランスを見ながら選考しています」(清水エスパルス)

トータル的に技術の高い選手だけを選ばないようにしています。技術は少し足りないけどすごく点を取る選手とか、対人プレーで力を発揮する選手など、それぞれの特徴を踏まえて選んでいます」(三重県トレセン)

「年代が上がれば上がるほど、自分を出せるか、しっかりと自己主張ができるかを見ていくことも重要」(東京都トレセン)

このほか、

・プレーをすぐにあきらめたりしないか
・味方にどういう声をかけているか
・最後までボールを追いかけているか
・子どもに話しかけた時、どういう回答をするか

などが参考として挙げられています。

参考資料:JFA news 2014年11月号

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「最終選考は自分の選択に自信がない」

--Ft. Meade-MD---6/24/2011--- ph-so-BritishSoccer-225---photo by Brendan Cavanaugh/P3 Imaging Inc.--- The installation is holding a soccer camp for the youth on post. The instructors are player from England. Friday is the last day of the camp, they will be playing in a "mini-world cup"

photo:Fort George G. Meade Public Affairs Office

セレクション当日に全員が万全の体調とは限りません。たまたま調子が悪かっただけかもしれない。たまたまケガ明けだったのかもしれない。たまたま…なことが重なっている可能性だってあります。

それはどの試験も同じです。熱があっても試験は待ってくれません。

この選手が調子が悪いのは、いまひとつ精彩に欠けるのは、「たまたま」ではないのか…。

人を選ぶことは、簡単なことではありません。受けるほうから見ると、「いい選手を取って、悪い選手を落とした」というたいへんシンプルな話になってしまうのですが、この裏には大変なコーチたちの葛藤があります。

しかも、この「選ぶ」という基準は、サッカーにおいては入試のように点数で決められるものではありません。明確な基準があれば、選考は機械的に行うことができるでしょうが、サッカーはそういうスポーツではありません。

陸上競技の選考会のように、割り切れる世界ではないので、そこにはさまざまな思いが付きまといます。

フィジカルもテクニックも恵まれているが、メンタルの弱い選手と、メンタルは強くテクニックもあるが、フィジカルで劣る選手。最後の1人をこの2人から選ばなければなりません。もう決まっている9人の選手たちとの相性は、どちらの選手もマッチしています。

あなただったら、どちらを選びますか?

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ユースコーチの仕事は選考だけではない

コーチ6photo:popofatticus

セレクションは、ユースコーチの仕事のひとつにすぎません。本当の仕事は、セレクションのあとに始まります。

選抜された選手をよりよく育て、トップチームに入れるように育て上げること。これが育成に当たるユースコーチのメインの仕事になります。

その他、こんなことも育成コーチの仕事になるようです。

・チームの運営
・会費の徴収
・遠征の企画、コーディネイト、実施
・予算管理

参考記事:あじまー32(沖縄国際大学)

ユースコーチを目指すジュニア選手のために

コーチ7photo:USAG- Humphreys

ユースコーチになりたいチームはありますか?そうしたら、そのチームの公式HPから、ユースコーチのプロフィールを見てみてください。

ほとんどが元プロ、そしてそのチームでプレーしていた元Jリーガーです。ユースコーチになりたかったら、まずプロを目指すこと。そして、なりたいチームでプレーできる選手になることが求められます。

元Jリーガーでなくても、コーチになることはできなくはないようですが、相当の有力な人間関係と実績(Jリーガーとしての経験はないが、大学選手権に優勝している、自分がコーチしている無名のタウンチームがぐんぐん強くなって全国出場など)がないと難しいようです。

ユースコーチを目指すのではなく、プロサッカー選手を目指すところからユースコーチへの道は始まるようです。

コーチの資格について

--Ft. Meade-MD---6/24/2011--- ph-so-BritishSoccer-225---photo by Brendan Cavanaugh/P3 Imaging Inc.--- Coach Paul Smith from Peterborough England gets a little handycapt in goal when a group of 3 and 4 year olds start climing over him The installation is holding a soccer camp for the youth on post. The instructors are player from England. Friday is the last day of the camp, they will be playing in a "mini-world cup"

photo:Fort George G. Meade Public Affairs Office

日本サッカー協会(JFA)が実施している公認指導者講習は、サッカーの指導に携わる人ならだれでも受けることができます。

実際の指導に当たっては、まずD級コーチから。土日の二日間で取ることができるD級コーチの資格を取って、そのあとC級、B級へとステップアップしていくことができます。D級コーチを受ける際に、公認キッズリーダーの資格を持っているかいないかは問われません。

C級、D級は満18歳以上、キッズリーダーは満16歳以上なら講習会を受講することができます。D級コーチは公認C級コーチの養成講習会内容を2日間(9.5時間)に凝縮したもので、比較的取りやすいものになっています。

C級講習会(大阪府サッカー協会の場合)

15時間の講義
18時間の実技
9時間の指導実践
1時間の筆記試験
・別に、大阪府サッカー協会独自のテーマについて数時間の講義(計43時間+α)

となっています。全てのカリキュラムを終了し、最後に行われる試験に合格したうえで、C級コーチに認定されます。必ず全日参加し、テストに合格することが必要です。ケガなどで実技が行えない場合は、不合格になる場合があります。

18歳以上なら誰でも受けられますので、興味があるジュニア選手は18歳になったらC級コーチに挑戦してみるのもおすすめです。

D級コーチ(大阪府サッカー協会)の場合

講義として
・理念
・発育発達、育成の全体像について
・コーチング
・メディカル
・審判・ルール
・大人の関わり
・実技振り返り
5時間15分、

実技として
・ゲーム
・テクニック
・サンプル
・シュート
4時間15分受けた後に筆記試験に合格することが必要です(計9.5時間)

参考サイト:一般社団法人大阪府サッカー協会技術委員会

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最後に

ユースコーチは、ほぼ全員が「選ばれる、選ばれない」という厳しい競争を経てきた元選手たちです。選ぶものの葛藤と、選ばれるものの焦燥を両方知っているコーチたちによってセレクションは行われています。

選ばれた選手をさらに育成し、花開かせてトップチームへ送り込めるように、日本サッカーの牽引を目指してユースコーチたちが日々努力してくれている結果が現在のJリーグの姿のような気がします。

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